ルナ・ティレルの中心広場には、春の夜がそっと降りてきます。
街灯が、石畳をふんわりと照らし出し、その下には焼きたてパンの屋台が並びます。ミャオ・シルヴァはふわふわの銀灰色の髪としっぽをひらりとなびかせながら、やさしい明かりのもとに立ちました。パン屋さんからは、ほんのり甘いパンとバターの香りが優しく流れてきて、ミャオの耳がぴくりと揺れます。
「あつあつのパン、いかが?」と差し出され、ミャオはほかほかのパンを両手で受け取りました。その手のぬくもりと、パンの柔らかさ。広場を包む夜風は少しひんやりしていましたが、パリっと焼けた皮の中から、ほわんと湯気と香りがひろがります。
ベンチに腰かけ、ミャオはゆっくりとパンをかじりました。甘い生地の味わいと、静けさに包まれた夜の広場。パンを一口ほおばれば、心にぽっと小さな灯りがともるようでした。
遠くで鈴の音が響き、ミャオは「うん、いい感じ…」としっぽをぴょんとうれしそうに立てました。今夜も、ルナ・ティレルの暮らしはやさしい夢の中へ溶け込んでゆきます。

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